『終末のワルキューレ』賛否両論!ネトフリのアニメはなぜ攻めている?
累計発行部数600万部越えの人気作『終末のワルキューレ』がネットフリックスでついに放送開始!しかし、一部の演出に「紙芝居みたいだ」と厳しい意見が。一方で「あえて動きを抑えた演出だ」という意見もあり、賛否両論の状態になっています。
じつは、ネットフリックスのアニメが賛否両論になるのは初めてではありません。演出や表現の過激さなどにおいて、地上波アニメと一線を画すことがよくあるのです。
もちろん良い評価ばかりではありませんが、印象に残るのは確か。いつの間にか「ネトフリは攻めてる」という印象を持っている方も多いのではないでしょうか?
なぜネットフリックスは攻めたアニメコンテンツを作るのか?その理由を考察していきます。
『終末のワルキューレ』8話の演出に賛否両論の声
ネットフリックスでアニメ化された『終末のワルキューレ』ですが、8話のあるシーンが「賛否両論」を呼んでいます。
その演出とは、回想シーンの一部で一枚絵をそのまま動かすというもの。キャラや背景などがまったく動かない演出に、手抜きだと感じた視聴者は多かったようです。
一方「これは演出としてアリ」という視聴者もおり、今までになかった演出を認められる派と認められない派に別れてしまったようです。
しかし、むしろこの演出が気になって視聴したいという層も現れている模様。賛否両論の話題は人を呼ぶ効果があるようです。
ネットフリックスのアニメは賛否両論の作品が多い?
ネットフリックスのアニメに賛否両論の話題が付いて回るのは今に始まったことではありません。演出・過激さ・構成などにおいて、地上波アニメでは考えられないことを数々やってきています。
最近話題になったのが、表現が過激すぎた『DEVILMAN crybaby』や演出が漫画すぎた『極主夫道』、そしてアニメクールの枠から外れた『エデン』など。これら3作品がどう賛否両論だったのかを見てみましょう。
『DEVILMAN crybaby』|過激すぎる映像の数々
『DEVILMAN crybaby』は2018年に配信開始されたアニメです。有名作品「デビルマン」の新シリーズで、永井豪先生の画業50周年作品という点も話題を呼びました。
『DEVILMAN crybaby』はとにかく表現が過激!性描写や残酷なシーンもガンガン入っており、デビルマンのバイオレンスさとエロティックさを余すところなく描いていました。地上波だったら絶対に放送できなかった内容だと思います。
過激な作品というと、ネットフリックスで先行配信された『ドロヘドロ』も有名。しかしBS11やTOKYO MXなどで放送されているため、『DEVILMAN crybaby』がどれだけ過激だったか分かります。
『極主夫道』|漫画ベースの演出方法
4月に配信された『極主夫道』も、紙芝居に近い演出スタイルで賛否両論を呼びました。
漫画のコマをそのままアニメにしたような作風で、声優は伝説の実写PVを担当した津田健次郎さん。漫画の再現度はかなりのもので、むしろ漫画がそのまま動いていると言ってもいいレベル。原作とのイメージのズレがこれほど無い作品も珍しいと思います。
しかし、悪く言うと動きが少ない演出とも取れるため、物足りなさを感じた視聴者もいたようです。
『エデン』|4話完結のショートシリーズ
『エデン』は2021年のネットフリックスオリジナルアニメ。全4話という短編作品で、作品の評価が良好な反面、1クール(12話)に慣れているためか、短い印象を受けた視聴者は多かったようです。
しかし、配信というプラットフォームを考えれば12話構成の必要性も無いわけで、むしろ配信限定アニメが増えれば、アニメの話数や放送時期はもっと自由になっていくかもしれません。
賛否両論の先にあるプラットフォームのブランディング
ネットフリックスのアニメに賛否両論が寄せられるのは、ネットフリックスが「攻めの姿勢」を崩さないからではないでしょうか?
ネットフリックスは、「実験的」とも言えるコンテンツを多く投下することで、オリジナルコンテンツの可能性を探っているように見えます。
そして、その積み重ねはそのままブランディングになります。では、一見破天荒なネットフリックスのブランディングとはどういったものなのでしょうか?
ネットフリックスには「ここにしかない」がある
ネットフリックスはオリジナルコンテンツ制作にハンパなく力を入れている配信プラットフォームです。なんと2021年度の年間予算は170億ドル(約1.85兆円)だというのですから驚きです(2021年度第1四半期収支報告書より)。
日本のキー局のコンテンツ制作予算は、多くても年間1,000億円程度だと言われています。さらに、東京オリンピックの予算は約1.6兆円。ネットフリックスのコンテンツ制作費はオリンピックよりも多いのです。
多額の予算を投入する狙いは、コンテンツのブランディング。自らが制作者となり「ここにしかない」コンテンツを供給すれば、唯一無二の存在になれるのです。
アニメ制作会社やアーティストとの包括契約にも積極的
ネットフリックスは、アニメ制作会社やトップクリエイターとの包括契約にも意欲的です。好条件で囲い込むことで、ネットフリックスに積極的にコンテンツを供給してもらおうという狙いがあります。
ネットフリックスは日本のアニメを、全世界に需要のあるコンテンツであるとして、非常に高く評価しています。
アニメ制作予算はテレビ局よりかなり高額であると言われており、世界に向けたコンテンツの発信源になろうという姿勢が見て取れます。
包括的業務提携によるNetflix作品
2019年
- 「ULTRAMAN」(Production I.G)
2020年
- 「オルタード・カーボン: リスリーブド」(アニマ)
- 「攻殻機動隊 SAC_2045」(Production I.G)
- 「ドラゴンズドグマ」(サブリメイション)
2021年以降に配信予定
- 「スプリガン」(デイヴィッドプロダクション)
- 「ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン」(ウィットスタジオ – Production I.Gのグループ会社)
- 「スーパー・クルックス」(ボンズ)
「過激な作品=ネットフリックス」の構図ができつつある
ところんオリジナルコンテンツ制作に力を入れるネットフリックス。「ここにしかないコンテンツ」でブランディングする試みは、すでに形になってきている部分があります。
それは「過激な作品=ネットフリックス」の構図。原作が過激な作品のアニメ化が報じられると、「ネトフリでアニメ化するのでは?」という憶測が飛ぶのです。これは、ネットフリックスなら地上波では放送できない映像も放送できるというイメージが定着したからでしょう。
もしかしたら今後、高額な予算が必要な作品も「ネトフリでアニメ化するのでは?」というイメージが付くようになるかもしれません。それだけネットフリックスのアニメは自由であり、力を入れたプロジェクトなのです。
近い将来「ネットフリックス」というニュースタンダードが確立されるかも
ネットフリックスはたかが配信プラットフォーム、されど配信プラットフォーム。日本においては、まだテレビよりもメジャーではありませんが、配信範囲はテレビよりも圧倒的に広く、そしてコンテンツの制作予算も圧倒的に多く確保されています。
つまり、規模を考えればアニメの制作・表現・配信方法などについて常識にとらわれる必要はないはず。配信という形態に最適な方法を選び、新しいネットフリックスのスタンダードを創り上げてもいいはずです。アニメは12話1クールという常識は影を潜め、もっと最適な長さで、もっと最適な表現でアニメが作られるようになるかもしれません。
いずれネットフリックスは「配信プラットフォーム」という肩書すら取り払われ、「ネットフリックス」というジャンルになるのではないでしょうか。
「ネットフリックス」が「テレビ」に肩を並べる日は意外と近いかもしれませんね。