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『閃光のハサウェイ』はガンダムだけどガンダムじゃない|新しすぎる3つのポイント

2度の延期を経てついに上映された、映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』。「新しいガンダム」と呼ぶファンも多く、「今までのガンダムと明らかに違う」と感じている人も多いようです。

しかし、そこまで言うほど今までのガンダムと違うのでしょうか?作画やアクションのクオリティが上がったとしても、そこまでの感想は抱かないと思います。

じつは『閃光のハサウェイ』は、今までのガンダムのスタンダードから脱却した、ある意味「脱ガンダム」的な作品。ガンダムシリーズを多く見ている人ほど、その違いに驚くと思います。

そこでこの記事では、『閃光のハサウェイ』が新しいと言われる3つのポイントを紹介。脱ガンダムと正当進化を両立させた、ガンダムのニュースタンダードを解説します。

新たなガンダム『閃光のハサウェイ』ガンダム史上最高の興行収入を狙う

6月11日、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』がついに上映開始。初動3日間の興行収入は5億円を超え、ガンダムシリーズの興行収入最高額である『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』の23億円超えも現実味を帯びてきました。

SNS上には称賛する感想が多く投稿され、作品のクオリティを裏付ける結果となりました。

作品は3部作構成になっていますが、じつは劇場で続編ものをやるのは2005年~2006年の『機動戦士Zガンダム』3部作以来。劇場オリジナルの続編ものとなると、ガンダム史上初となります。

これは、3部作でも劇場に人を呼べるという自信の現れではないかと思います。そして、来てくれた人の期待に全力で応える。『閃光のハサウェイ』は、スタッフ入魂の新しい始まりを告げるガンダムなのではないでしょうか。

『閃光のハサウェイ』が新しいと言われる3つのポイント

『閃光のハサウェイ』が「新しいガンダム」と呼ばれるのは、クオリティが進化したからだけではありません。本作は今までのガンダムの殻を破った作品でもあるのです。

ガンダムシリーズは、戦争という状況下での「群像劇」を描いた作品が多く、独特なセリフ回しやMSの活躍などが人気です。

しかし、『閃光のハサウェイ』ではこれらのいわば「ガンダムスタンダード」から脱した部分が多い作品。特に、空気感・軸・MS描写は、今までのガンダムと一線を画しています。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

脱ガンダムの「空気感」|海外ドラマのような感覚に

ガンダムには独特な「空気感」と、それを作り出す視点があります。

一般的なアニメは主人公視点で物語が進みますが、ガンダムは敵味方関係なく状況を外から観察するような視点で描かれることが多いです。また、独特なセリフ回しや客観的なカメラワーク、独特なテンポなども手伝って、ガンダム特有の空気感を感じることとなります。

『閃光のハサウェイ』では、この空気感がかなり異なっています。

視点は主人公のハサウェイ寄りで物語をロールプレイする感覚を強めていますし、カメラワークは主観的に、テンポもドラマチックになっており、まるで海外ドラマを観ているような感覚を味わえます。

とはいえ、ガンダムの空気感をすべて壊しているわけではありません。

ガンダムというコンセプトはしっかり守り、変えていく部分はガッツリ変える。いい意味で脱ガンダムを果たした空気感だと思います。

心理描写を「軸」に|より緊張感のある雰囲気に

ガンダムは状況描写を中心に描かれることが多いですが、『閃光のハサウェイ』ではハサウェイの心理描写を「軸」に置いています。

ハサウェイは植物監査官とテロリストという二面性を持っており、さらには辛い過去を背負った陰のある人物でもあります。そんなハサウェイの心理描写を軸にすることで、作品全体に懐疑心のフィルターがかかったような、緊張感のある雰囲気が漂います。

しかし、心の底には熱い決意を抱いているため、その行動を予測しながら観るドキドキも味わうことができます。

フルCGの「MS描写」|より複雑で迫力のある動きを実現

ガンダムシリーズはほとんどの作品でMSが手描で描かれています。特に『機動戦士ガンダムUC』は手描きの集大成と呼べる作品で、「これが手描きか」と言いたくなるシーンが山ほどあります。

『閃光のハサウェイ』では、手描きにこだわった「MS描写」を一新。MSをフルCG化し、より複雑で迫力のある動きにチャレンジしています。

ガンダムでCGと聞くと、いやな予感がする方もいると思いますがご安心を。恐らく想像のかなり上をいくクオリティを目の当たりにできるはずです。特に構造が複雑なペーネロペーとクスィーガンダムは注目してもらいたいポイント。できればBDを買って、一時停止やスロー再生を駆使して見ることをおすすめします。

こちらの動画でMSのアクションが多く描かれています。

公開日から劇場で限定BDを販売する新たなマーケティングも

『閃光のハサウェイ』はマーケティング方法にも新しい要素を取り入れています。

なんと公開日から劇場限定でBDを販売しているのです。

通常、BDやDVDは上映終了後に販売されるものです。しかし、あえて公開日から劇場で販売することで、映画の感動冷めやらぬファンたちが多く購入しているのです。

結果、この販売方法は大成功。公開から3日でじつに5万枚以上を売り上げています。

【BD販売数:上映全215館<主要93劇場6/11~6/15(5日間)+その他122劇場6/11~6/13(3日間)>販売数】
・劇場限定版 :売上34,222枚
・劇場先行通常版:売上19,452枚
合計53,674枚
『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN Ⅵ 誕生 赤い彗星』(2018年5月5日上映/35館/興収2.8億):劇場販売枚数 6,772枚
『機動戦士ガンダムUC episode7 虹の彼方に』(2014年5月17日上映/35館/興収4.8億):劇場販売枚数 19,998枚

引用元:http://gundam-hathaway.net/news.php?id=18793

原作小説との違いにも注目!”あの”ラストシーンはどうなる?

今までのガンダムとの違いと同じくらい、原作小説との違いも気になるポイントですよね。原作小説が30年以上前の作品のため、時代に合わせた修正が加えられているのではと、気になっている方は多いと思います。

特にラストシーンを気にしている方は多いはず。目を覆いたくなる”あの”ラストシーンが劇場で映されるのかは、作品最大の論点だと思います。

ここでは、ラストシーン変更の考察も含め、原作小説と映画の違いを3つ紹介します。

映画版『閃光のハサウェイ』は映画版『逆襲のシャア』の続編

前提として覚えておきたいのが、映画版の『閃光のハサウェイ』は小説版とは違い、映画版『逆襲のシャア』の続編だということです。

小説版の『逆襲のシャア』は、登場人物や展開が映画版と一部異なます。『閃光のハサウェイ』にもっとも関連するポイントは、ハサウェイが恋した人物・クェスが、チェーンに撃破されたか、ハサウェイ自ら撃破したかということ。

クェスの死という事実はどちらも同じですが、ハサウェイが心に負った傷の深さはかなり違うと思います。両方の『逆襲のシャア』を履修して、ハサウェイの心の差を考察してみてもいいかもしれません。

キャラデザや声優が一新!特にケネスは別人に

ハサウェイ、ケネス、ギギ、レーンなど、主要キャラのキャラデザ・声優が全面的に変更されています。ハサウェイの声優が佐々木望さんから小野賢章さんに変更されたのはまだ記憶に新しいと思います。

中でも別人レベルに変更されたのが、ケネス・スレッグです。

今までケネスの姿が描かれたのは、原作小説・ゲーム『Gジェネレーション魂』・映画、の3回。小説とゲームでは金髪オールバック姿の厳しい印象、ゲームの声優は立木文彦さんが務めましたがが、映画では青髪の優男風で、声優も諏訪部順一さんへ変更となりました。

以前の姿を知っている方が映画を見れば「誰!?」と思うでしょうし、映画からゲームの姿を見ても「誰!?」と思うはず。

ぜひ小説・ゲーム・映画に触れて、そのギャップを体験してみてください。

劇場版『Zガンダム』のように結末は変わるのか

『閃光のハサウェイ』最大の論点はやはりラストシーンだと思います。原作のまま貫いてほしい気持ちと救いを用意して欲しい気持ち、多くの人がその間で揺れていると思います。

例えば、『Zガンダム』は主人公が精神崩壊してしまうバッドエンドが有名な作品ですが、劇場版ではハッピーエンドに変更されており、当時賛否両論を呼びました。

同様に『閃光のハサウェイ』もラストが変更されるかもしれません。社会情勢を反映してか、人々に希望を見いだす作品としてPRされている部分があり、前向きなラストに変わる可能性は十分考えられます。

内容によっては、アムロとシャアの意思を継ぐものとしてUC.Next100の歴史に大きな影響を与える可能性も。ハサウェイが次の宇宙世紀100年の礎となる歴史もありうるかもしれません。

『閃光のハサウェイ』は新たなガンダムの歴史の1ページ目

何もかもが今までのガンダムと違う『閃光のハサウェイ』。ガンダムの殻を破って、さらなる可能性を感じさせてくれる作品です。

いわば、『閃光のハサウェイ』は新たな歴史の1ページ目。アニメとしてのガンダムの歴史と宇宙世紀世界の新たな歴史、その両方のスタート地点的作品だと言えます。

歴史の始まりはぜひその目で確かめてください。

そしてその結末は希望か絶望か、宇宙世紀新たな100年の始まりを見届けましょう!

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