エヴァのファン創作物ガイドラインが話題に- 一線が引かれるも「同人誌を燃やす」のはまだ早い
いよいよ公開が迫っている「シン・エヴァンゲリオン劇場版」ですが、
本日、ファンが騒然となるものが発表されました。
「ファン創作物公開に関するガイドライン」です。
現在多くのファンが、エヴァ関連のイラストを書いてSNSにアップロードしたり、「同人誌」を制作して販売したりしています。
これは「完全に合法」とは言えませんが、著作権者が訴えない限りは「違法」ではない活動です。(日本では二次創作がまだ親告罪です。著作権者が訴えない限りは犯罪になりません)
その活動に今回ガイドラインが制定され、一線が引かれた形となります。
気になる箇所を抜粋してみます。
(注意:下記に記載するのは抜粋となるため、当事者足り得ると思われる方は、全文を読まれるようおすすめします)
『エヴァンゲリオン』シリーズのファン創作物の公開に関するガイドライン:カラー
https://www.khara.co.jp/guideline/
法人・個人を問わず商用利用を目的とするものは使用許諾が必要
1.このガイドラインは、個人の方がファン活動としての創作物を、基本的に無償で公開するためのものです。法人の方々、個人でも商用利用を目的とするものは、個別に作品の使用許諾が必要です。
なお、ここでいう商用利用は、無償・有償を問いません。何らかの広告・宣伝・販促を目的とする行為は無償配布であっても商用利用にあたります。
商用利用についてのお問い合わせはこちらからお問い合わせください。
https://www.khara.co.jp/guideline/
これはファンが創作したものであっても、エヴァ関連である限り適用されるもののようです。
この後続くガイドラインは「無償で公開する前提」となり、「有償で公開」する場合は”ガイドラインに抵触しようがしまいが、使用許諾が必要”となります。
ただし逆に言えば、使用許諾でOKが出れば、その下のガイドラインに抵触したとしても有償頒布が可能になる、とも言えます。
そしてこの文章、一見すると「同人誌の販売」が使用許諾を得なければいけない…と思えるかもしれません。
しかしその問題を判断するには、下まで呼んでいく必要があります。
「同人誌がOKなのかNGなのか」については後述します。
一般的に利用されているサービス -でのみ公開可能…個人サイトはNGかも?
2.本ガイドラインの範囲内において、動画、静止画(イラスト・漫画・写真など)、および小説を以下の場で公開できます。
(1)全年齢向けのSNS一般
(2)イラスト投稿サービス
(3)小説投稿サービス
(4)動画投稿・配信サービス一般
ただし、多くの方が一般的に利用し、かつ公序良俗に反しないサービスに限ります。https://www.khara.co.jp/guideline/
まずSNSですが「全年齢向け」と明記してあります。
……厳密に言うと、実はtwitterにも年齢制限があります。13歳未満の利用が禁じられているのです。
ただ、正直勝手な考えですが、カラー側がtwitterを禁止するかどうかはかなり微妙なところです。「ファンアートが多く投稿されている」SNSで「多くの方が一般的に利用し」ており、なおかつ厳密に「全年齢向け」のものはイマイチ思い浮かびません。
株式会社カラー自体が、twitter上で「安心してファンアートなどを制作していただくためのルールですので、ぜひご確認の上、創作活動を楽しんでください」と書いていることからも、twitter自体をNGとするのは正直考えにくいです。
可能であればカラー側から注釈がほしいところですね…
ポルノ表現はNG!……でもないかも?
以下の表現・内容の創作物の公開は控えてください。
(1)本作品、または他者の気持ちや名誉、考え方などを傷つける目的のもの
https://www.khara.co.jp/guideline/
(2)特定の政治・宗教・信条を過度に推す、または貶めるもの
(3)過度に暴力的・グロテスクなもの
(4)ポルノ表現そのものを目的としたもの
(5)その他反社会的な表現のもの
(6)他者の権利を侵害しているもの
(7)公式作品と誤認される可能性のある様態のもの
このガイドラインが発表されて、多くの方が驚嘆したのがこの部分。
「ポルノ表現そのものを目的としたもの」を「控えて下さい」となっている箇所です。
一見すると年齢制限がつく二次創作物そのものが、全て禁止された…ととり得る文章です。
……少しアレな話ですが、エヴァンゲリオン関連の二次創作において、年齢制限がつくようなコンテンツは、それこそエヴァ誕生の頃からずっと創作され続けてきました。
これまでファンアートを作ってきた人は、該当する画像全てを削除しなければならない…?と感じ、話題になっているのです。
ただ、そう考えるのには少し引っかかる部分もあります。
「ポルノ表現そのものを目的としたもの」となっているのです。
これはかなりアバウトな表現です。
各創作物において、「ポルノ表現そのものを目的」としたものと、そうでないもの、どこに敷居を置くのか、微妙なラインです。
ただ一つ言えることは「ポルノ表現すべてを禁止」した訳ではないということが読み取れます。
もし「ポルノ表現」すべてを禁止したい場合「ポルノ表現を伴うもの」となっていなければおかしいのです。
……この解釈、結構揉めるかもしれませんね。
同人誌はOKなのかNGなのか → このガイドラインではまだ触れられていません。
そしてファンアートを作っている方、楽しんでいる方、双方が特に気にしている部分があります。
「同人誌は出していいの?」という点です。
結論から述べます。このガイドラインでは「同人誌の頒布・販売について結論を出していません」
なぜなら末尾にこう書いてあるからです。
※現在、ファンアートの販売・製品化に関するルールについても検討しています。 続報をお待ち下さい。
https://www.khara.co.jp/guideline/
ファンアートの販売・製品化については、まだ検討している、と明記されています。
一見ガイドライン1の「商用利用を目的」とするものに抵触しそうですが、
あくまで販売・製品化については別途のガイドラインを定めることが明記されています。
なので、同人誌がOKなのかNGなのか、この時点では結論が出せないことになります。
(正直別個のガイドラインを出すぐらいなので、全てNGということは無いと思います。すべてNGなら今回のガイドラインに含めればいいだけなので…)
ガイドラインはまた改定されるかも…
正直な所、ガイドラインについては疑問に感じる部分が少しあります。
例えばガイドラインの1では「法人の方々、個人でも商用利用を目的とするものは、個別に作品の使用許諾が必要です」となっていますが、
6では「有料ファン会員サービス」の利用や「収益化プログラム」が動作してもOKとなります。
「商用利用」と「有料ファン会員サービス」を伴う場所でのファン作品公開、どこに境目があるのか、気になります。
(この辺は「同人活動」が「商用」にはいるのかどうか、といった点も絡んでくるかもしれません。そうなると問題はまた複雑化しますね)
また先程の「ポルノ表現そのものを目的としたもの」が一体どのような定義なのか、
更には多くのファンアート製作者が「商用利用をカラーに問い合わせた」場合、カラー側に負担がかからないかも心配になります。
しかし、今回のガイドライン、忘れていけないのは
あくまでカラー側としても「安心してファンアートなどを制作していただくためのルール」としていることです。
こういったガイドラインが出た場合、「ファンアートを締め出したいのか」と反発の声が聞こえることもありますが、あくまでカラーにしてみれば「安心してファンアートなどを制作して」ほしいのです。
この点、念頭において反応したいものですね。
なお、ガイドラインの9はこうなっています。
9.みなさんのご意見や反応、世の中の変化などを参考に、予告なくガイドラインを変更することがあります。
https://www.khara.co.jp/guideline/
いかなる感想を抱いたとしても、落ち着いて反応すればガイドラインが更に適したものとなるかもしれません。
ひとまずは、「ファンアートの販売・製品化に関するルール」について続報を待ちたいと思います。