映画『鬼滅の刃』全米1位は本当に作品が評価された結果?アメリカから意外な感想が届く
アメリカで上映中の『映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が興行収入全米1位を獲得!日本映画が1位になるのは『劇場版ポケットモンスターミュウツーの逆襲』以来のことでじつに22年ぶりです。
しかし、一つ気になるのが、この全米1位は純粋に作品が評価された結果なのかということ。「話題性で視聴した人も多いかも?」という心配を抱いている人も多いのはないでしょうか。
そんな心配はご無用。『鬼滅の刃』はアメリカでも日本と同じように「面白い作品」として評価されています。しかも興味深いことに評価ポイントが日本人と大差ないのです。
アメリカの人たちは『鬼滅の刃』に対してどんな感想を抱いているのか。アメリカのファンたちは日本のファンと違うのか。SNSを中心に現地の声を見ていきましょう。
『鬼滅の刃(demon slayer)』に全米が熱狂中!SNSも賑わう
2021年4月23日、『映画「鬼滅の刃」無限列車編』が全米で公開されると、アメリカのファンたちは早速映画館へ。SNS上では「Demon slayer time!(鬼滅の刃の時間だ!)」と、興奮気味な投稿も見られました。
2月26日からマイアミの劇場で限定上映されていただけに、全米公開を待ちわびていたファンも多かった模様。推しキャラのグッズを買ったり、炭治郎柄の服を着て映画を見たり、ファンアートを投稿したりと、思い思いの形で全米公開を祝福していました。
このSNS上で盛り上がっている様子、既視感を感じる方もいるのではないでしょうか。そう、日本で『鬼滅の刃』が上映された直後と同じ賑わい方です。
国は違ってもファンの喜び方は同じ。作品を愛する気持ちに国境など関係無いのです。
意外!アメリカの『鬼滅の刃』に対する感想は日本とほぼ同じ
アメリカでも『鬼滅の刃』が愛されているのは分かりましたが、アメリカの人たちはどのような感想を抱いているのでしょうか?生活の風土が違えば、作品に対する感想も違ってくるかもしれません。
かつて『もののけ姫』がアメリカで上映されたとき、エンディングに対して「納得できない」「腑に落ちない」という声が多かったと聞きます。
果たして『鬼滅の刃』はアメリカの人たちを満足させる作品だったのか、SNSに投稿された感想を見ていきましょう。
この映画を言葉で説明することはできない。今まで見た中で最高の映画だ。
竈門炭郎が言ったことはすべて真実だ!煉獄さんが真の勝者なんだ。
鬼滅の刃は、最初から最後まで信じられないほど驚異的な映画だった。
煉獄は伝説のキャラクターだ。すっかりお気に入りキャラになってしまったよ……。
『映画「鬼滅の刃」無限列車編』は、アクションもストーリーも素晴らしい映画でした。アニメファンは絶対に見に行くべき。特に炎柱・煉獄はすごかった。『鬼滅の刃』の次回作が本当に楽しみです。
なんと、日本のSNS上で見られる感想と同じような感想が並んでいます。いくら検索しても、日本のファンたちと同じような感想が出てくるため、「ここは日本なのでは?」と思うほどです。
感想の日本人化は日本アニメに対する変化の表れ
少し前まで、日本のアニメに対する感想は以下のようなものでした。
- これが日本のアニメか
- キャラクターが細すぎる
- 顔に違和感を感じる
アメリカアニメとの差を論じる声が多く、珍しいものを見るような感想が多かったのです。
しかし、映画『鬼滅の刃』に対して珍しさを感じる声は本当に見つかりません。すでに日本アニメを珍しがるフェーズは過ぎ去り、純粋に作品を楽しむフェーズへと移行しています。
その結果、作品に対する感想は面白いほど日本と同じになりました。これはアニメが世界共通のコミュニケーションツールである証明と言ってもいいのではないでしょうか。
キャラや物語から哲学を考察するファンも現れるように
『鬼滅の刃』は、炭治郎を始めとするキャラの生きざまに共感する人が多い作品です。炭治郎の逆境を跳ねのける胆力や、善逸の弱さに打ち勝つ覚悟など、内包された哲学はとても魅力的なものです。
アメリカでもこうした哲学を感じ、考察を巡らせる人が増えているようです。
例えば、
- 己の強さを弱者を守るために使う柱たちの姿勢
- 煉獄さんに内包された無私無欲かつ情熱的な人間性の源泉
- 柱や炭治郎と真逆とも言える無惨の利己的な性格
このようにキャラクターや作品に込められたメッセージ性が注目されています。
かつて上映された『もののけ姫』は哲学性の強い作品だったため、アメリカでの支持を得られなかったとも聞きます。しかし『鬼滅の刃』に哲学を巡らせる状況になった今なら、作品の見方も変わっているかもしれません。
グッズやコスプレでもっと『鬼滅』を楽しむファンも多い
アメリカでも日本と同じようにグッズ・コスプレ人気が高まっています。
特にグッズに熱を上げるファンは多く、グッズを自作する猛者も多く現れています。
推しキャラクターと一緒にいたい気持ちは日本もアメリカも共通のようです。
アメリカならではの『鬼滅』に対するこだわりも
アメリカの『鬼滅』ファンには、アメリカならではのこだわりポイントがあることを発見しました。
それは吹き替えに対するこだわり。英語では「dub」と呼ばれるのですが、英語に吹き替えられることで、日本語版のクオリティが損なわれていないかを気にするファンが多いのです。
吹き替え版のみ上映している映画館もあるようで、SNS上では吹き替えのクオリティを質問する様子も見られました。
質問:映画は私の近くの劇場で吹き替えで上映されているだけです。それは一見の価値がありますか?
吹き替えはかなりしっかりしていて、大画面で見る価値がありますよ
それほど悪くはなかったのですが、感情的なシーンで炭治郎の声が強く出てないかなとは思いました。それ以外のキャラクター、特に猗窩座は完璧です!
「猗窩座は完璧」と言われると、途端に英語吹き替え版に興味が湧いてきますね。煉獄さんの「心を燃やせ」の英語版「Keep your heart burning !」も聴いてみたいところです。
『呪術廻戦』もアメリカで人気!動画配信サービスでアニメオブザイヤー獲得も
『鬼滅の刃』と同様に『呪術廻戦』もアメリカで人気が高まっているそうです。日本でも『鬼滅の刃』→『呪術廻戦』の順で人気が出ましたが、アメリカでも同じ流れを汲んでいるようです。
さらに驚くことに、アメリカの動画配信サイト「クランチロール(Crunchyroll)」では、ユーザーたちがその年のNO1アニメを決める「アニメオブザイヤー」で1位を獲得。名実ともに全米に支持される作品となりました。
ほかにも『Re:ゼロから始める異世界生活』や『僕のヒーローアカデミア』なども人気。動画配信サービスは日本アニメを世界に浸透させるプラットフォームとして活躍しているようです。
コンテンツが浸透するほどアメリカと日本のファンは同じになっていく
NETFLIXが日本アニメの配信に力を入れるように、日本アニメは動画配信サービスを通じてどんどん世界へ発信され、そして急速に浸透が進んでいます。
その結果、日本のアニメは「珍しいもの」から「面白いもの」へと変化しました。皆さんにも「絵柄が苦手だったけど観たら面白かった」アニメが1本はあるのではないでしょうか。その現象が世界規模で起こっているような状況なのです。
作品への違和感が取り除かれた先には、純粋に作品を楽しむ心が現れます。今、世界中で日本アニメの新規ファンが生まれ、そして蓄積された日本コンテンツに向かって興味の食指が伸び始めているのです。
映画『鬼滅の刃』全米1位は日本アニメが浸透したことの証明
『映画「鬼滅の刃」無限列車編』が全米1位を獲得したことは、単なる大ヒット以上の意味があると思います。
それは、アメリカへ日本アニメがすっかり浸透し、ヒットする土壌ができあがったことを証明してくれたことです。Crunchyrollでの『呪術廻戦』人気からも分かるように、日本の面白いコンテンツをアメリカでも同様に消化できるようになったのです。
最近は電子書籍の海外進出も進んでおり、漫画の段階からリアルタイムで発信できるようになりました。これにより、日本と同じタイミングで海外にもファンを創出できるようになりました。
今回の成功例を先駆けに、今冬公開予定の『劇場版 呪術廻戦0』も全米公開へと続くかもしれません。近い未来、日本でディズニー映画が上映されるように、アメリカで日本アニメ映画が上映されるようになるかもしれませんね。