『呪術廻戦』でスタジオ「MAPPA」が注目!今アニメスタジオに求められるものとは
人気絶好調の『呪術廻戦』に、今期から制作会社を移した『進撃の巨人 The Final Season』。少年漫画界のビッグタイトルが今、アニメスタジオの「MAPPA」に集中しています。
MAPPAは2011年に設立した若いスタジオですが、ここ数年で本数を一気に増やし、視聴者からも「安心のMAPPA」と呼ばれるようになりました。一体なぜなのでしょうか。
それは、MAPPAの作品は「原作ファンが安心できる」仕上がりだから。これは『鬼滅の刃』を手掛けた「ufotable」にも共通することなんです。
この記事では、なぜMAPPAはビッグタイトルでも安心なのか。そして、MAPPAが持っている、これからのアニメスタジオに求められるものについて説明していきます。
『呪術廻戦』に『進撃の巨人』も!MAPPAにビッグタイトルが集まる
今、アニメ制作スタジオの「MAPPA」が注目を集めています。
それもそのはず、2020年9月からは『呪術廻戦』を、12月からは『進撃の巨人 The Final Season』を手掛け、さらには「週刊少年ジャンプ」の人気作品『チェンソーマン』を手掛けることも決定したのです。
これがどれだけスゴイかを例えるなら、大晦日の特番を同時に3作品手掛けているような感じでしょうか。それだけ人気のタイトルがMAPPAに集まっているのです。
ビッグタイトルでも安心のスタジオ「MAPPA」とは
MAPPAは2011年に発足したアニメ制作スタジオ。元マッドハウスの丸山正雄氏が設立したスタジオで、制作スタッフは東京と仙台の2スタジオ合計200名が在籍しています。
作品を発表し始めたのは、2012年の『坂道のアポロン』が皮切り。当初から高いクオリティで話題になり、その後も『ユーリ!!! on ICE』や『ゾンビランドサガ』など、話題作を多く生み出しています。
2016年には、長編アニメーション映画『この世界の片隅に』がアカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞。MAPPAの名を知らしめるきっかけとなりました。
2020年には、Netflixと新規作品制作における包括的業務提携を締結。今後ますますの発展が期待されています。
「安心のMAPPA」と言われる制作クオリティ
MAPPAは、とにかくクオリティが崩れない制作スタジオです。
クオリティの維持はビッグタイトルの制作で特に大切なことです。
少しでも崩れてしまうと、ファンたちをガッカリさせ、離脱させる原因となります。つまり、クオリティの維持とは、ファンたちに安心して作品に没入できる環境を提供することなのです。
そこで驚くべきことが、MAPPAが受注する本数の多さです。制作本数を減らしてクオリティを担保するなら分かるのですが、MAPPAは本数を増やした上で、クオリティも担保しているんです。
2020年は過去最多の9作品を手掛け、『呪術廻戦』、『進撃の巨人 The Final Season』に加え、アニメ化不可能と言われた『ドロヘドロ』やオリジナル作品の『LISTENERS』も受注。
過密なスケジュールにも関わらず、どの作品もクオリティを落とさずキッチリ仕上げてくるため、アニメファンの間では「安心のMAPPA」と呼ばれるほどになりました。
アニメ化はなぜ制作スタジオが重要なのか
そもそも、アニメ制作にあたって、制作スタジオはそんなに重要なのでしょうか?
その答えは「とても重要」です。
スタジオはそれぞれ、持ち前の「作風」があり、同じ作品をアニメ化してもスタジオによって仕上がりが異なります。
また、所属している「スタッフ」によっても仕上がりが異なります。スタッフの技量はそのまま作品のクオリティに反映されます。
「作風」と「スタッフ」。この2点について、制作スタジオの重要性を説明していきましょう。
スタジオによって「作風」が変わることがある
「シャフ度」や「サンライズ立ち」といった言葉をご存知でしょうか。
どちらもスタジオ特有の作画カットを指す言葉で、シャフ度はスタジオ「シャフト」、サンライズ立ちはスタジオ「サンライズ」を象徴する単語として親しまれています。
このように、作画カットを始め、物語の構成や風景描写など、アニメはスタジオの「作風」に強く影響されます。
そのため、アニメ化は原作の持ち味とスタジオの作風がかみ合うことが大切。作品の持ち味を表現できるスタジオとマッチングすることで、原作がより輝くアニメへと仕上がっていくのです。
優秀なスタッフが揃っているスタジオは強い
制作のほとんどを自社スタッフが手掛ける「京都アニメーション」や『鬼滅の刃』を手掛けた「ufotable」など、クオリティが話題になるスタジオには優秀なスタッフが多く在籍しています。
アニメ制作は、100%自社スタッフではなく、自社スタッフと下請け企業、フリーランススタッフなどが協力しながら進められます。
制作の中心となるのが自社スタッフです。優秀なスタッフが指揮を取れば仕上がりも納得がいくものになりますし、大半を自社スタッフで固めれば、連携が取りやすくクオリティも担保されやすいです。
そのため、自社スタッフを育成することはかなり重要。作品作りの核となれる存在を増やし、層の厚い制作陣を作ることで、スタジオ自体が成長していくのです。
これからのアニメスタジオに求められるものとは
成功するアニメ化作品には、ある共通点があります。
それは、原作のコンセプトを汲み取る「構成力」と、原作を正当進化させられる「作画力」です。
大ヒットとなった『呪術廻戦』はこれが高いレベルでまとまっていた作品です。原作に忠実で、なおかつクオリティはファンの期待を超えてきています。
MAPPAはこの両方を高いレベルで実現してくれるスタジオ。MAPPAが持つ重要な能力の2つ「構成力」と「作画力」について見ていきましょう。
コンセプトをくみ取れる「構成力」
アニメ化とは、原作を単純に映像化するだけではありません。
漫画や小説という紙媒体に流れる「間」を違和感なく再現したり、バトルシーンを映えるカット割りで表したり、最も見せたい部分に注目できるようにしたりと、原作のコンセプトを最適な形で表現することが必要なのです。
これらの再現に必要なのが「構成力」です。
構成作りは主に監督の仕事です。監督が大まかなプロットやイメージを作った後、制作スタッフと相談をしながら完成させます。
そのため、監督の力はもちろんですが、それを再現する制作スタッフの力も不可欠。
MAPPAの作品クオリティは、監督と製作スタッフの両方が高い技術を持っている証明と言えるでしょう。
正当進化ができる「作画力」
MAPPAの作画クオリティは、つねに高いレベルで安定しています。いわゆる「神作画」に近いレベルが通常運転なので、とても安心して観ていられます。
そして、「ここぞ!」という場面では、オリジナルカットや演出を追加しながら、見どころを正当進化させてきます。『呪術廻戦』第7話で、五条悟が領域展開をしたシーンはその代表格です。
自分が好きなものが、クオリティアップして映像化されれば、ファンはもちろん歓喜。このスタジオなら、自分の愛した作品を最高の形で世に出してくれると、スタジオへの信頼度も増していくのです。
進撃の巨人 The Final Season』はスタジオ力を見せつけた作品
安定してハイクオリティな作品を出し続けることで、アニメファンたちから支持されるようになったMAPPA。
そして、その実力を見せつけたのが、WIT STUDIOから制作を引き継いだ『進撃の巨人 The Final Season』です。
本作は、1期からクオリティの高さが話題だった作品。一貫したハイクオリティでファンの心を鷲掴みにしていました。
MAPPAは、その期待を裏切ることなく作品を提供することに成功しています。
作画の雰囲気は多少変更がありますが違和感は無く、ファンを離脱させることなく引き継いでいるのです。
クライマックスからでもコンセプトから外れない「構成力」。
違和感無く作品に没入させる「作画力」。
いわばMAPPAの「スタジオ力」を見せつける作品となったのです。
今後は『チェンソーマン』に期待が集まっていますが、MAPPAなら期待を超える形でアニメ化してくれることでしょう。
「安心のMAPPA」。
この言葉は、スタッフたちのたゆまぬ努力から生まれていたのです。