アニメ町おこしの成功のカギとは?〜水木しげるロードとらき☆すたの例を見る〜
みなさんは「聖地巡礼」という言葉を聞いたことがありますか?アニメやドラマの舞台のゆかりのある土地に、作品のファンが集まり写真を撮ったり観光したりすることを指します。近年ではこの聖地巡礼を利用し、アニメを使った町おこしをする自治体が増えているのです。
しかし、すべての町おこしが成功しているとは言えないのが現状です。町おこしが成功する理由はどこにあるのでしょうか?
今回はアニメマンガを使った町おこしの成功例とそのカギを探っていきたいと思います。ぜひ最後までご覧ください。
アニメによる町おこし成功には何が必要か
アニメによる町おこし成功のカギは3つ。
①作品自体が人気であること
②連続的な戦略が練られていること
③地元民のアニメへの理解があること
なぜこの3つが必要なのでしょうか。1つずつ解説していきたいと思います。
作品自体が人気であること
これは言わずもがなですが、作品自体の人気、知名度がないとお客さんは呼び込めません。
具体的な数字でいうとアニメの場合、DVD 1巻が平均2万枚ほど売れているのが望ましいです。
例を挙げていくと、らき☆すた(埼玉県久喜市)や、あの花(埼玉県秩父市)、弱虫ペダル(神奈川県箱根町)などはいずれもこの基準を満たしています。
これらの作品は実写化されていたり、主題歌が爆発的にヒットしていたりと「いわゆるアニメオタクの人以外にでも名前は聞いたことある」というレベルです。
DVD2万枚というとアニメ業界では年に数本しか出ない大ヒットですが、観光客を呼び込むにはこのぐらいの数字が必要になります。
連続的な戦略があること
ただ、アニメの絵を貼ったり関連商品を売るだけでは客足は伸びません。短期的な施策にとどまらず、連続的に企画していく必要があります。
例えばその土地限定のアニメグッツを作る、スタンプラリーを行う、作者や声優のイベントをおこなうなどです。
後に紹介するらき☆すたの例では毎年のお祭りにらき☆すた神輿を導入したり、キャラクターの住民表を発行したりと連続的にイベントや企画を打っています。
最初だけ力を入れるのではなく、何年か後まで見越して計画を立てることがカギになります。
地元民のアニメへの理解があること
作品が人気でファンが足を運んだとしても、地元が受け入れる体制を取れてなければ意味がありません。
アニメだから、オタクだから、という理由でネガティブなイメージが先行していたり、逆にアニメオタクだから他の観光客と差別化をはかろうとするとファンは居心地が悪くなってしまいます。
ファンが欲しいのは、そのキャラクターが実際にいそう、いた、ということを体験することなので、「ただアニメの絵をはっとけばいいよね」という発想だと必ず失敗します。
町おこしを成功させるには、ファンを1観光客として扱いながらもファン視点に立った名物やイベントを企画することが必要になります。
ここまで、アニメによる町おこしを成功させるための3つのカギを紹介しましたが、実際のところどのような企画が行われているのでしょうか。
水木しげるロードとらき☆すたの例を見ながら解説して行きます。
水木しげるロードから見るアニメ町おこし
水木しげるロードとは、鳥取県JR境港駅から本町アーケードまでの800メートルの間に水木しげる作品のオブジェが並んでいる区画のことです。
商店街には多数の関連オリジナル商品が並び、近隣には水木しげる記念館や妖怪神社が存在。水木しげるロード単体だけでなく、境港市全体を盛り上げに役立っています。
では水木しげるロードはなぜ成功したのか、先程の3つのカギに着目してみていきましょう。
言わずと知れた大人気マンガ
人気に関してはみなさんご存知だと思います。水木しげるさんの作品といえば「ゲゲゲの鬼太郎」をはじめとして国民のほとんどが知っている大人気作品ばかり。マンガ、アニメだけでなく実写映画や朝ドラ「ゲゲゲの女房」の大ヒットなど関連作品の話題性は十分です。
関連作品が度々ヒットするので、連続性のある集客にもつながり、商店街の活性化に協力しています。
30年近くの間、連続的にイベントを開催
水木しげるロードの成功の一因に未完成のまま開業したというものがあります。
水木しげるロード構想時の行政の経済状況もあり、800メートルの構想のうち、1993年のスタートでは200メートルの部分開業でした。
しかしこれを逆手に取ることで、銅像設置ごとの原作者水木先生を招いての式典をおこないました。
他にもユニークな企画を連続的に実施、妖怪に関連した著名人を招いた1996年の「第一回世界妖怪会議」や、2003年水木しげる記念館の開館、2006年の「猫娘列車、ねずみ男列車の運行」「有志の寄付による、寄付者名前入りの街頭設置」など長年にわたって企画を続けてきました。これによって来場者数を増やしていったのです。
地元民の協力
境港市では、水木しげるロード振興会の設立や、地元有志によるまちづくり会社の設立、地元商店街のグッツ制作などが行われ、地元民一体となった町おこしが行われました。
水木しげるロードではキャラクター著作権使用料が破格の値段に設定されており、山陰地方のみで販売する商品は通常よりも安価で制作することが可能です。
その結果ユニークな商品を地元商店街の人々が開発できるようになり、町おこしに広がりが生まれました。
らき☆すたから見るアニメ町おこし
続いてはらき☆すたの例を見ていこうと思います。らき☆すたは埼玉県久喜市が舞台の日常系アニメです。
深夜アニメが町おこしの成功例になった当時珍しい事例で、ワイドショーやニュースにも取り上げられました。特に鷲宮神社は参拝客を増やし続け、2004年放送時の15万人から2009年には42万人まで増加、2011年に47万人を突破して以来高止まりしています。
深夜アニメながら社会現象に
水木しげる作品に比べると規模は小さいですが、それでも深夜アニメとしては異例のヒットを飛ばしています。DVD売り上げは平均2万枚を超え、OVAは4万枚を超えました。
主題歌である「もってけセーラー服」は日本レコード大賞のゴールドディスクに選ばれる記録的なヒットとなり、日常系アニメの代表作の1つです。
連続的な企画
実際のアニメの放送は半年のみでしたが、アニメ放送が終わってなお来場者数は増えています。これは、久喜市の連続的な企画によるものでしょう。
毎年、9月に行われる土師祭での「らき☆すた神輿」をはじめ、2008年には作中キャラクターの架空の住民表を発行し交付、2009年には泉家をモデルとしたギャラリーを開館、2010年には埼玉新聞社の主催のもとスタンプラリーが開かれるなど、多様な企画を毎年実施しています。
近年ではらき☆すた以外のアニメファンも訪れ、絵馬にアニメキャラを描く「痛絵馬」が定着するなど「アニメファンの聖地」としての役割も担うようになりました。
地元民のアニメへの理解
らき☆すたによる町おこしの一番の特徴はアニメファンへの理解がある企画の数々です。
地元商工会制作の鷲宮神社オリジナルグッツの作成や、ファン対象の大売り出しなどはもちろん、住民票の発行や泉家の再現など「キャラクターがここにいてほしい」というファン心理を的確に捉えた企画が多数行われてきました。
近年ではアニメ好き向けの婚活イベントを始めるなど、徹底的にアニメファンに寄り添った町おこしを行なっています。
最後に
いかがだったでしょうか。アニメの町おこしには「作品の人気」「連続的な戦略」「地元民のアニメへの理解」が必要です。
しかし、観光する側のマナーが悪かった場合にはこれらは実現しません。アニメ町おこしを成功させるためにもマナーは守って観光を行いましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
らき☆すたの神社って、まだ流行ってるのかねえ?